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ボタン・アコーディオンの歴史(1) [テックスメックス]

 メキシコ北部のノルテーニャや、テキサス南部のメキシコ系音楽であるコンフントあるいはテックスメックスで中心となる楽器、ボタン・アコーディオン。その出自の記録は、資料が今日にまで残されています。
 本節では、ボタン・アコーディオンについて、歴史的に捉える試みから始め、コンフントを成立させた、ボタン・アコーディオンの名手たちにまでスポットを当てることができればと思います。

 もともとアコーディオンは、ボタン・アコーディオンをもって誕生し、その後、クロマチック・アコーディオンや鍵盤アコーディオンが生まれて行った、というプロセスを経て発展していった楽器です。
 したがって、アコーディオン誕生の原型を保持しているボタン・アコーディオンが今日において使われていること自体、大変興味深いことということができます。
 ボタン・アコーディオンは、小振りでそんなに重くなく、持ち運びに便利、そして蛇腹の扱い方により凶暴な音も優雅な音も自在に出すことができる便利な楽器です。蛇腹を押す時と引く時で音が異なるため演奏法の修得に苦労するかもしれませんが、馴れればかなり複雑なメロディも紡ぎ出せるようになる。そんな魅力を持ったボタン・アコーディオンはどのように誕生していったのか、ウイキペディアやアーフーリーのライナーノーツ、それに"Puro Conjunto"などの文献を参考に、わたくしなりに整理を試みました。

 まずもともとは、中国から伝わった笙などをもとに、ヨーロッパの楽器職人が改良を加え、アコーディオンを開発していったと伝えられていますが、明確にアコーディオンと認識されるのは、1822年にドイツ、ベルリンのフリードリッヒ・ブッシュマン(Friedrich Buschmann)が特許を取得したもの(「ハンド・エリオーネ」と呼ばれた)とされています。しかし、近代的な10ボタンアコーディオンは1829年にウィーンのピアノ・オルガン職人、シリル・デミアン(Cyrillus Damian,1772-1847)が二人の息子たちとともに考案したものが最初とされているようです。
 「アコーディオン」という表記はデミアンによる命名であり、「和音」を意味する「accord」に「器」を意味するギリシャ語の接尾語を組み合わせたものだそうです。以下本稿でアコーディオンと表記するとき、それはボタン・アコーディオンのことを示しています。
 彼らが取得した、このアコーディオンと呼ばれる楽器に関する特許について、申請、受諾等の記録が今日にまで残されています。それによれば、デミアン親子は、1829年5月6日この楽器で特許を申請し、5月23日、特許が認められた、とのことで、特許取得の書類、原初のアコーディオンなどについては、以下のサイトに紹介されています。

http://www.ksanti.net/free-reed/

 当初のアコーディオンは、「基本的な概観は、メタルの薄片と蛇腹をくっつけた小さな箱で、持ち運びに便利で旅行者が持ち運ぶとき、この楽器に感謝するでしょう。」と説明されており、その利便性が強調されています。
 デミアン親子によって発明されたアコーディオンは、いわゆるボタンが縦一列に並んでいる、いわゆるワンロウ(1列)のボタン・アコーディオンです。
 その構造や仕組みについての詳細は触れませんが、持ち運びに便利だったことと、発明されたアコーディオンは、今日のボタン・アコーディオンの原型だった、ということを指摘しておきたいと思います。
 

 彼らが発明したアコーディオンは、その後、ロシアやイタリア、スペイン、イギリスなど、ヨーロッパ各地に普及していき、それぞれの地域で独自の発展を遂げました。

 そして、いうまでもなくアコーディオンは大陸から離れ、カリブ海の国々や、南米、中米などの諸国にも伝わっていきました。

 その理由はいろいろ考えられます。19世紀、ヨーロッパ諸国の不安定などの理由で、新大陸でひとやま当てようという野心をもった山師や、鉱夫や職人たちとともにもたらされたのではないか、あるいは、ヨーロッパの楽器商人が、中南米への移住者に注目し、積極的に市場を求めていった、などの説がとりあえず思い浮かびます。
 メキシコの銀山目当てに移住した鉱夫や、あるいは彼らを目当てのビール職人などが、手軽で、演奏しやすく、音も大きいアコーディオンを持っていったことは充分に考えられます。
 楽器商人については、はっきりした証拠は上げられませんが、ホーナー社はかなり速い時期からハーモニカをアメリカで普及させ、19世紀後半にはアコーディオンの販売にも力を入れていたようです。
 こうした説を総合して推測すれば、おおよそ以下の事が言えるでしょう。
 ボタン・アコーディオンは1820年代にドイツで発明され、その後、ヨーロッパ各地に普及していった。メキシコ、テキサス南部には19世紀半ばには伝えられていた、20世紀のはじめには、ホーナー社のアコーディオンがテキサス南部、メキシコ北部に普及していた、と。





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コメント 2

ベアトラック

やはりドイツが発祥の地でしたか。
原型に近いボタン式が今も残っているのは、とても面白いことですね。

先週、サンタフェ出張から帰ってきました。
今回の滞在中は、珍しく雨の日が多かった為、年に一度のスパニッシュ・マーケットでマリアッチを楽しむことが出来ませんでした。
by ベアトラック (2010-08-02 05:41) 

吾妻虎太郎

ベアトラックさん
ご無沙汰です。ナイス、コメント、ありがとうございます。
ボタン・アコーディオン、頑張ります。

by 吾妻虎太郎 (2010-08-02 21:19) 

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